今回は、税理士事務所職員が建設業経理士を取るべき理由を解説します。
建設業経理士って何?
建設業経理士って取っても意味ないんじゃないの?
税理士事務所に勤めていて建設業経理士という資格を知らない人もいると思いますが、それは当たり前ですのでご安心ください。
だって建設業に勤めているわけじゃないんですもん(笑)
ただし建設業経理士を取っても意味がないというのは大間違い!
税理士事務所の人間だからこそ、建設業経理士資格が活きる道があるんです。
- 税理士事務所で働いていて建設業のお客様の担当になった(なるかもしれない)
- 税理士事務所で働いているけど、建設業経理士という資格を初めて聞いた
- 税理士事務所で働いているけど、日商簿記の工業簿記が苦手
建設業経理士に興味を持った方は、ぜひ最後までご覧ください。
建設業の経理に興味はあるけど、税理士事務所に勤めるつもりはないなぁ……
というあなたは、ぜひこちらの記事をご覧ください。
建設業の経理業務そのものと、建設業経理士2級独学の方法について詳しく解説しています。
きくたがわ
大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。
建設業経理士とは?
建設業経理士とは、一般財団法人建設業振興基金が主催する建設業経理検定試験の1級か2級に合格した人のことを言います。
建設業経理検定試験とは、建設業経理に関する知識と処理能力の向上を図るための資格試験です。
建設業経理検定試験|一般財団法人建設業振興基金
「建設業経理士検定試験」(1級、2級)は、建設業法施行規則第18条の3に基づく「登録経理試験」として、また、「建設業経理事務士検定試験」(3級、4級)は(一財)建設業振興基金独自の試験として実施しています。
なお、1級及び2級建設業経理士検定試験に合格した者は、その合格した日から5年を経過する日が属する年度の年度末までは、経営事項審査における「公認会計士等の数」において評価されています。この期間を経過した後は、「登録経理講習」を修了することで評価対象となります。
試験は1級から4級までありますが、1・2級と3・4級で呼び名も取り扱いも変わるんです。
1・2級に合格していれば建設業経理士と呼ばれ、建設業法で定められた基準をクリアしているとみなされます。
3・4級に合格すると建設業経理事務士と呼ばれますが、こちらは主催独自の試験なのでそこまでではありません。
建設業経理士を一言でいえば、建設業の経理のプロとして認められた人ということ。
建設業経理士を持っていると、経営事項審査(経審)という公共工事を請け負う建設業の会社が必ず受けなければいけない審査で加点してもらえるのです。
この点が建設業法基準をクリアしているゆえの最大の恩恵です。
税理士事務所職員が建設業経理士を取るべき理由
ここからは、税理士事務所職員が建設業経理士を取るべき理由3つをご紹介します。
建設業の経理特有の科目や処理に慣れることができる
税理士事務所職員が建設業経理士を取るべき理由1つ目は、建設業経理に出てくる特有の科目や処理のしかたに慣れることができることです。
建設業経理試験の内容自体は日商簿記のような感じで、仕訳や試算表、精算表の作成が出題されます。
ですが、使われる科目は建設業特有のもの。日商簿記しか経験がないと見慣れない科目が多くなるのです。
- 完成工事未収入金
- 工事未払金
- 完成工事補償引当金
- 未成工事受入金
- 未成工事支出金
- 完成工事高
- 労務費
全体的に文字数も画数も増えるので書くのが大変なんですよね……(笑)
建設業のお客様を担当することになってから初めてこれらの科目を見ると、結構混乱すると思いませんか?
だいたいは商業簿記の科目に似た科目があるのですが、それでもいちいち頭の中で置き換えて考えていると慣れるまで時間がかかります。
中には建設業独特の考え方を反映した科目もあり、単に商業簿記の科目に置き換えられないのでもっと慣れるのに時間がかかります。
建設業経理士の勉強をしっかりしておけば、建設業のお客様を担当することになっても、焦ることなく対応できますよね。
建設業経理士の出題形式は商業簿記に近いですが、内容自体は工業簿記をレベルアップさせた感じです。(原価の振替、経費の配賦など)
特に工業簿記をさらさらっと流してしまっていた人は、復習&ステップアップにもなりますのでぜひ建設業経理士を勉強しましょう。
建設業のお客様の経理担当者と仲良くなれる
税理士事務所職員が建設業経理士を取るべき理由2つ目は、建設業のお客様の経理担当者と仲良くなりやすいことです。
建設業は、建設業経理士という資格が必要なくらい経理が専門的。
飲食業やサービス業だと「経営者が経理も自分でしている」というケースも多いのですが、建設業は経理が難しいので、専任の経理の人を雇っているケースの方が多いです。
お客様の会社に経理担当者がいれば、社長など経営者よりも経理担当者とやり取りする機会のほうが多くなることもありますよね。
そして、建設業で経理担当をしている多くの人は建設業経理士の資格を持っていると考えられます。
ということは建設業で経理を担当している多くの人は、時期に違いはあれど建設業経理士の勉強をして苦しんだ経験があるのです。
同じ経験や同じ苦しみを味わっている人って、何も共通点がない人より仲良くなりやすいですよね。
実際に私も在職中に建設業経理士2級を取得し、世間話で「この間合格したんですよ」と話したら「すごい!おめでとう!」「私が取ったときはさ~」と話してくれて、盛り上がったことがありました。
そこまで仲良くなれなかったとしても、自分たちも持っている資格を持っているということで担当者として信頼してもらいやすくなります。
建設業のお客様の仕事をより深くわかっているという証明になるので、遅くとも建設業を担当することになったらぜひ勉強を始めることをおすすめします。
建設業の経理転職で有利になる
税理士事務所職員が建設業経理士を取るべき理由3つ目は、建設業の経理に転職したいとき有利になることです。
前述の通り、建設業経理士を持っている従業員がいると経営事項審査で加点されるというメリットがあります。
つまり公共工事を請ける会社にとって、建設業経理士がいるかいないかは売上額につながる超重要問題。
1人しかいない建設業経理士持ちの経理担当者が急に辞めることになってしまったら、会社のランクを下げられてしまう可能性があるのです。
そんなとき会社はどうするかというと、できるだけ社内の多くの人に建設業経理士を取ってもらおうとします。入社後の取得を必須にしている会社も多数あります。
先ほど「建設業で経理担当をしている人の多くは建設業経理士を持っている」と書いたのはこのためです。
よって、建設業(特に公共工事を請けている会社)で経理事務を募集するときは、ほぼ間違いなく建設業経理士を持っている人を採用したいのです。
元税理士事務所勤務で建設業経理士を持っているとなれば、これほど建設業の経理事務転職に有利な状況はありません。
今後も今の事務所で働きたいと思っている人でも、いつ何があるかわからない世の中。建設業経理士を持っておいて損はないと思いますよ。
建設業経理士の難易度
建設業経理士を受けてみたいと思えてきた方のために、建設業経理試験の難易度をまとめます。
建設業経理試験の合格率
建設業経理試験の合格率は比較的高め。直近の第33回試験(令和5年9月実施)の合格率は、以下の通りです。
級 | 合格率 | |
---|---|---|
1級 | 財務諸表 | 39.4% |
財務分析 | 40.0% | |
原価計算 | 20.0% | |
2級 | 42.2% |
※3・4級は年1回3月試験のみのため省略
1級は3科目合格が必要で、合格率も科目と回によって結構ばらつきがあります。
最も難しいのは原価計算で、合格率が10~25%程度。財務諸表と財務分析は20~40%と回による差が大きいようです。
2級は比較的安定して40%程度の合格率になっていますので、初めて受ける場合まずは2級から挑戦するのが良いでしょう。
日商簿記とどっちが難しい?
気になるのは日商簿記とどっちが難しいか?ということですよね。
あくまで体感としてはですが、日商簿記2級と建設業経理士2級を比較すると圧倒的に建設業経理士2級の方が簡単です。
日商簿記3級と建設業経理士2級を比較すれば、日商簿記3級の方が簡単だと思います。
すでに日商簿記2級を持っている人なら、仕事をしながらでも十分に合格できると思いますよ!
建設業経理士2級は、出題形式や問題構成が決まっているので過去問と大きく変わることがほぼありません。
また、近年の日商簿記2級ほど意地悪なひっかけ問題がないということも難易度が低く感じるポイントだと思います。
日商簿記3級のような出題形式で、内容が工業簿記(建設業特化)みたいなものだという認識がいちばん近いでしょう。
ただし、40%という高めの合格率に安心してしまわないようにご注意くださいね。
建設業経理士2級の合格率が高いのは、
・日商簿記よりも受験者数が圧倒的に少ないため
・建設業勤務や日商簿記取得済みなど、すでに基礎知識がある受験者が多いため
といった理由も考えられます。
単に難易度が低いわけではないということをお忘れなく……
まとめ:仕事のためにも自分のためにもぜひ勉強してみて!
いかがでしたか?
建設業経理士は、税理士事務所の職員にもメリットが多数ある資格です。
税理士事務所の職員が建設業経理士を取るべき理由
- 建設業の経理特有の科目や処理に慣れることができる
- 建設業のお客様の経理担当者と仲良くなれる
- 建設業の経理転職で有利になる
事務所によっては資格手当の対象にもなると思いますので、興味のある方はぜひ取得を目指してみてください。
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