マイナ保険証は知ってるけど、会社側でやらなきゃいけないことってあるの?
2023年4月には医療機関にマイナ保険証利用対応が義務化されたり、2024年12月にはマイナ保険証への完全移行を目指していたり……
実際どうなるかはまだわかりませんが、マイナ保険証を利用し始めている人がいることは事実です。
ところで現行の保険証は、会社が手続きをして発行されたものを従業員に渡していますよね?
もし従業員がマイナ保険証のことを事務に聞いてきたら、答えられますか?
今回は、マイナ保険証について会社の事務員として知っておきたいことを解説します。
きくたがわ
大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。
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マイナ保険証とは?
マイナ保険証とは、マイナンバーカードを健康保険証として病院や薬局で利用できるようにしたもののことです。
マイナ保険証を利用するメリットは、以下のようなことが掲げられています。
- 病院での受付が簡単になる
- 従来の保険証を使うよりも、病院での支払額が少なく済む
- 病院窓口で高額な医療費を負担する必要がなくなる(限度額適用認定証が不要になる)
- 就職や転職、引っ越しをしても保険証を切り替える必要がなくなる
- 特定検診や薬の情報をマイナポータルからいつでも見られる
- 確定申告での医療費控除が簡単にできる
また既に終了していますが、2023年2月までにマイナ保険証利用登録をした人にはマイナポイントが付与される事業もありました。
そのため、マイナンバーカードを作ったついでに「とりあえず登録しておこう」とマイナ保険証を作った人も多いかもしれません。
では早速、事務員が知っておくべきことを見ていきましょう。
マイナ保険証について事務員が知っておくべきこと
会社では「マイナ保険証にする手続き」はできない
まず始めに知っておいてほしいことは、会社でマイナ保険証を作る手続きというものは存在しないということです。
マイナ保険証を利用するためには、以下の2つの手続きを従業員さん自身にしてもらう必要があります。
- マイナンバーカードの発行
- マイナンバーカードの健康保険証利用申し込み
1のマイナンバーカード発行は言わずもがな、従業員さん自身がインターネットや役所窓口で申し込み、受け取りに行かなければなりません。
2の健康保険証利用申し込みは、マイナンバーカードが発行されたあとに従業員さん自身で申し込み手続きをする必要があります。
1はやったけど2はやってない、という人も多いのでは?
2023年12月現在、健康保険証利用申し込みができるのはマイナポータルかセブン銀行ATMの2つ。
つまり、マイナ保険証を作りたい場合会社でできることは何もないのです。
社会保険の資格取得・資格喪失手続きはこれまで通り必要
マイナ保険証があれば、転職しても保険証を切り替える必要がないということは、社会保険の手続きが不要になるのでは?と思った方もいるかもしれません。
残念ながら、社会保険の資格取得や喪失の手続きはこれまで通り必要です。
社会保険関係の事務をやったことのある方ならお分かりかと思いますが、資格取得・喪失手続きでは必ずその従業員さんのマイナンバーを記載しますよね。
その手続きで提出されたマイナンバーをもとに、マイナ保険証の方が「今この人はこの会社にいるんだな」と判断しているのです。
ですので、会社から渡す従来の保険証は(今のところ)変わらず発行されますし、退職したときは回収しなければなりません。
会社側の手続きがきちんとされていることで、初めてマイナ保険証が便利に使えるってことですね!
むしろ、マイナ保険証を利用している人が入社したり退職した場合は、これまでよりも迅速な手続きが必要になります。
会社での取得・喪失の手続きが遅れると、その従業員さんがどの健康保険に入っているかマイナ保険証側が把握できなくなります。
その間、従業員さんがマイナ保険証を利用できない期間ができてしまうのです。
マイナ保険証を利用できず、従来の健康保険証も資格証明もないままその従業員さんが病院を受診してしまうと、いったん10割負担になっていまいます。
従業員さんに負担や迷惑をかけないために、今後は資格取得・喪失の手続きを迅速に行うことが求められます。
マイナ「ではない」保険証は捨てちゃダメ!
事務員として今後、マイナ保険証ではない従来の保険証の取り扱いを従業員さんに説明する必要も出てくるでしょう。
事務員として馴染みがあるのは、マイナ保険証よりも従来の保険証かと思います。
ですが従業員さんの中には「保険証として使えればどちらでもいい」というタイプの方がいることも想定されます。
そうなると、マイナ保険証を作ったからといって従来の保険証を捨ててしまう従業員さんも出てくるかもしれません。
- マイナ保険証を作っても従来の保険証は捨てないこと(退職時には回収するため)
- マイナ保険証を作ったあとでも、従来の保険証も病院で使えること
- 病院で機械の故障等でマイナ保険証が使えなかったときのために、従来の保険証も持っていくこと
このような、従来の保険証の取り扱いをしっかり把握し、従業員さんへ周知するのも事務員の役目になるかと思います。
マイナ保険証の運用が安定するまでは、最新情報を常に仕入れておくのが良さそうですね。
高額療養費支給申請・限度額適用認定証申請手続きは減るかも
マイナ保険証を利用するメリットの中に、こんなことがありましたね。
・病院窓口で号が苦な医療費を負担する必要がなくなる(限度額適用認定証が不要になる)
これにより、健康保険の手続きのうち高額療養費支給申請と限度額適用認定証申請の手続きを会社ですることがぐっと減るかもしれません。
これまでは、病院の窓口での支払いが高額になってしまった従業員さんがいたら高額療養費支給申請、入院の予定が入った従業員さんがいたら限度額適用認定証申請をしていたかと思います。
この申請をすることで、従業員さんの医療費負担を限度額以上にならないようにできていました。
しかしマイナ保険証を利用していると、この限度額適用認定証がなくても限度額以上の支払いをする必要がないのです。
よって、マイナ保険証が広まるにつれて高額療養費支給申請と限度額適用認定証申請を会社でする機会は減っていくと思われます。
将来的には「そんな手続きが昔はあったんですか!?」という事務員も増えるかも?
ただし、この2つとセットで申請することの多い傷病手当金の申請は無くなりませんので、忘れないようにしてくださいね。
マイナ保険証 従業員からの想定質問集
Q.病院に行ったらマイナ保険証が使えなかったんだけど……
病院の機械が故障しているわけではない限り、手続き中か手続き漏れが原因と考えられます。
その人が最近入社・退職した人だったり、健康保険の扶養に入れたばかりの家族だったりした場合は、手続きに漏れがないか、いつ手続きしたかを確認しましょう。
数日以内に手続きしたばかりであれば、マイナ保険証に紐づけられるまでのタイムラグの間に病院に行ってしまったことが考えられます。
これらを従業員さんに説明し、従来の保険証が届けばマイナ保険証もきちんと使えることを伝えましょう。
このようなことにならないよう、手続きが済んだらすぐに「数日中はマイナ保険証が使えない可能性がある」と知らせておく方が親切かと思います。
Q.入院することになったので、限度額適用認定証を申請するよう病院に言われたんだけど……
①マイナ保険証を持っているか②入院する病院はマイナ保険証に対応しているか、の2つを確認しましょう。
両方当てはまる場合は、会社で限度額適用認定証申請をする必要はありません。
「病院に行ったときにマイナ保険証を提示すれば大丈夫」と伝えればOKです。
どちらかしか当てはまらない場合は、これまで通りの限度額適用認定証申請をしましょう。
このように病院が言ってくる場合は、たいていどちらかが当てはまっていないのだとは思いますが……
マイナ保険証を持っているのに従来の保険証で受診していて、病院側で把握できていない可能性も考えられます。
念のため確認することで、余分な仕事を減らせるなら良いことですよね!
Q.マイナ保険証を無くしたから再発行してほしい
無くしたのは「マイナ保険証」なのか「従来の保険証」なのかを確認しましょう。
マイナ保険証と従来の保険証をどっちでもいいと思っている従業員さんの場合、混同して話している可能性があります。
無くしたのがマイナ保険証なのであれば、マイナンバーカードを無くしたということなので、再発行の手続きを取ってもらうよう伝えましょう。
従来の保険証を無くしたという場合は、これまで通り健康保険証の再発行手続きをすればOKです。
マイナンバーカードを無くした場合は、再発行の手続きが結構面倒みたいですね……
Q.(退職時)マイナ保険証を作ったから元々ある保険証は捨ててしまった
社会保険の資格喪失手続きの際に、健康保険被保険者証回収不能届を一緒に提出しましょう。
マイナ保険証に関わらず、従来の保険証を返却できない場合はこの届出を一緒に提出することになります。
資格喪失届の「保険証回収」欄を「返不能○枚」にしただけでは不十分なので、気をつけてくださいね。
やはりこのようなことにならないよう、日頃から従業員さんに従来の保険証の取り扱いを呼び掛けておくのが良いかと思います。
現行の取り扱いが変わらない限り、回収不能届を出す機会も増えるかもしれませんね……
まとめ
いかがでしたか?
マイナ保険証について、会社の事務として知っておくべきことをまとめました。
現在進行中の制度なので、今後もどんどん変更になることも出てくると思います。
常に最新情報にアップデートして、日々の業務に対応していきましょう!
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