初めて税理士にお願いしたい事業主のかた、税理士を変えるか悩んでいる事業主のかた。
税務調査で有利になるから、税務署OBの税理士を選んだほうが良い
という話を聞いたことがありませんか?
今回はこの話が本当なのか疑問に思っている方向けに、税理士補助として税理士事務所に5年勤めていた私が実際のところを解説したいと思います。
ちなみに私がいた事務所には、税務署OBの税理士も試験で合格した税理士もいました。
全員がそうとは限りませんが、両者には結構明確な違いも感じていたので、それを元に税理士選びのコツをご紹介します。
- 税務署OBの税理士と試験合格の税理士の違いを知りたい
- 税務署OBの税理士と試験合格の税理士どちらにお願いしたらいいか悩んでいる
- そもそも税理士の選び方を知りたい
きくたがわ
大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。
税務署OB税理士・試験合格税理士って?
そもそも税務署OB税理士・試験合格税理士とは、税理士資格を取ったルートを指して便宜上呼び分けているものです。正式な呼び方ではありません。
税務署OB税理士とは、その名の通り税務署に一定期間以上勤めて税理士資格を取得した税理士です。
多くは税務署を定年退職したあと税理士になっていますが、条件を満たしていれば定年前の退職でも税理士になれます。
税務署OB税理士は他にも、「国税OB」とか「税務署出身」と呼ばれることもあります。
対して試験合格税理士とは、税理士試験に合格して税理士資格を取得した税理士です。
税理士試験の合格率は、令和4年度で19.5%という狭き門。
さらに5科目の合格が必要なので一発合格する人はほぼおらず、最短でも3年、平均でいえば5~10年かかるというデータもある超高難易度の国家試験です。
税務署に就職して長年勤めるのと税理士試験に合格するのって、どっちが難しいんでしょうね?
税務署OB税理士が有利とは限らない
まずご理解いただきたいのが、税務署OBの税理士だからといって税務調査で有利になることはありません。
税務署OBの税理士は税務署にいたぶん内部事情をわかっていますが、あくまでもわかっているというだけ。
税務調査にきた調査官が税務署時代に目をかけてきた後輩だったとして、調査自体が朗らかに進むことは確かにあります。
だからといって「多少のことは見逃してくれる」「本当はダメだけどお世話になった先輩だから言わない」といったことはありません。
逆に、税務署OB税理士のほうが「この調査官は新人だから大したことは言ってこない」と油断したり、「ベテランの調査官だからしっかり準備しよう」などと調査官によって態度を変えることは実際あります。
ですので、一概に税務署OB税理士のほうが税務調査で有利とは言えないのです。
税務署OB税理士・試験合格税理士どちらを選べば良い?
税務署OB税理士にも試験合格の税理士にも、一長一短あります。
私が実際に会った先生たちの印象からそれぞれのメリットデメリットを紹介しますので、ぜひ税理士選びの参考にしてください。
ただし個人差もありますので、出自のみで判断するのは危険だと念頭に置いておいてくださいね。
税務署OB税理士の特徴
- 税務調査ので調査官の出方をわかっている
- 平均年齢が高い
- 元お役人感が強い
税務調査での調査官の出方をわかっている
税務署OB税理士最大の特徴は、何よりも税務調査で調査官がどう出るかわかっているということです。
税務署OB税理士は、税務署時代に調査官側で税務調査に立ち会っている可能性が高く、その場合は現場での相手の出方を知っています。
出方を知っていれば、調査の通知があってから当日までの間に突っ込まれそうなところを教えてくれますし、それに対する対策も打ってくれます。
調査官側の経験値が高い税務署OB税理士であれば、税務調査で強い味方になってくれる可能性は高いでしょう。
ただしこれは、税務署時代に法人課税部門や個人課税部門に長く所属していた税務署OB税理士の場合です。
税務調査にあまり関わらない部門に長くいた税理士もいますし、前述のとおり調査に強いからといって黒が白になるわけではありませんので注意しましょう。
平均年齢が高い
税務署OB税理士の特徴2つ目は、税理士自身が高齢である可能性が高いことです。
前述したとおり税務署を定年退職して税理士になり独立開業する人も多いので、税務署OB税理士の平均年齢は高くなっています。
年齢が上であるぶん経験値があり頼りがいがあるとも言えますが、新しいことを受け入れてくれなかったり、定年後の仕事なのでそんなに気合を入れたくないという先生もいます。
また年齢が上だと引退も近いもの。すぐに引退してしまいそうな先生か、まだまだ頑張ってくれそうな先生かを見極める必要もあります。
元お役人感が強い
税務署OB税理士の特徴3つ目は、元お役人なのでその雰囲気が強いことです。
税務署は公共の施設であり、税務署職員は公務員です。
公務員の中でも、市役所などと比べて税務署は特に堅い雰囲気があると思いませんか?
長年その空気の中にいた人が税理士になっていますので、言葉選びや態度がお堅い人が多い印象です。
中には「来た人に聞かれたことだけ説明する」といった態度のザ・お役人型税理士もいますので、要注意です。
試験合格税理士の特徴
- 税理士をサービス業だと思っている
- 平均年齢が若い
- 社会人経験が少ない可能性がある
税理士業をサービス業だと思っている
試験合格税理士の特徴1つ目は、税理士業をサービス業だと思っていることです。
これは先ほどの「税務署OB税理士はお役人感が強い」ことに対比して表現しています。
試験合格で税理士になった人は、税理士として誰かの力になれることに憧れを持って目指す人が多いように思います。
それゆえ、お客様のために頑張る!という積極的な姿勢が強い気がします。
また税務署内部の情報に強くないことが弱みにも思えますが、逆に言うと調査官によって態度を変えることもありません。
平均年齢が若い
試験合格税理士の特徴2つ目は、平均年齢が若いことです。
試験合格で税理士を目指す人は、若いうちから税理士になることを目標にして頑張ってきた人が多く、税務署OB税理士より平均年齢が若くなっています。
税理士全体の平均年齢は60歳以上。40代の税理士でも若いと言われますので、20~30代の税理士にお願いしたい場合は、必然的に試験合格税理士から探すことになるでしょう。
社会人経験が少ない可能性がある
試験合格税理士の特徴3つ目は、社会人経験が少ない可能性があることです。
若くして税理士を目指し、試験を受けて税理士になった人は、とんでもなく多くの時間を勉強に割いています。
働かずに「税理士浪人」だった人もいますし、働いていたとしても税理士事務所で修行しながら試験勉強をしていた可能性が高いですね。
そういう人は社会人としての経験値が少なく、意外と社会のことを知らない可能性もあります。
税理士選びで重視したいポイント
ここからは、税務署OB税理士と試験合格税理士の特徴を踏まえたうえで、税理士選びで重視したいポイントをご紹介します。
特徴を見て何となく「うちはこっちにお願いしたいなぁ」と思った方も、思わぬ落とし穴がある可能性もありますので、どうぞ最後までご覧ください。
税理士自身の情報(年齢、性別、職歴など)
まずはざっくりでもどんな先生にお願いしたいかを考えてみましょう。
若い人がいいのかベテランの人がいいのか、男性女性、それこそ税務署OBなのか一般企業を経験しているのか、などのことです。
それ自体はもちろん大事ですが、「なぜそれを重視したいか」を考えることで他に税理士に何を望んでいるかを考えることができます。
- 若い人がいい……最新情報を柔軟に取り入れてすぐ教えてくれる人がいい
- ベテランがいい…経験値があって落ち着いた人がいい
- 女性がいい………業種に理解がありそうな人がいい
どの税目に強い税理士なのか
税理士選びのときに必ず確認したいのが、法人税や所得税などどの税目に強い税理士なのかということです。
税務署OBなら最も長く所属していた課の税目、試験合格税理士なら受験のときに選択した科目が得意なはずですね。
自分が希望するサービスをきちんと提供してくれるか見極めるために、事前に得意な税目を確認しておくのが有効です。
たとえば税務調査のときに頼りたい場合は、法人税や所得税に強い税理士に依頼すると良いでしょう。
相続が近々発生しそうなのでそれも相談したいという場合は、相続税や資産税に強い税理士を選ぶ必要があります。
もし「どの税目も完璧です!税理士ですから!」みたいな税理士がいたら、個人的には逆に信用できません……(笑)
わかりやすく説明してくれるか
税理士選びではわかりやすく説明してくれるかも気にしたいポイントの1つです。
会計や税務の専門用語は、ひたすらわかりにくく難解なものが多いですよね。
税務署OB税理士だと、お役所感覚が抜けておらずわかるように説明する気がない人もいます。
試験合格税理士でも、知識をひけらかしたくて専門用語をとにかく使いたいタイプの人もいます。
そうではなく、できるだけ噛み砕いてわかりやすく説明してくれる税理士を選ぶほうが、事業主としての知識も身につき選択肢も増えるのでおすすめです。
税務調査の実績はどうか
税務調査対応を期待して税理士に依頼する場合は、税務調査の実績も事前に確認できれば理想です。
年間何件くらいの調査実績があるか、そのうち何件が是認(修正事項なし)で終わったかなどを教えてくれる税理士は、調査対応に自信があると言えるでしょう。
調査件数だけだと、件数が多くてもほとんどが否認事項ありで修正申告になり、追徴課税を取られているという可能性もありえます。
「顧問先が何件、そのうち直近1年で調査があったのが何件、そのうち是認が何件」まで言える税理士はなかなかいないと思いますので、信用できると思います。
まとめ:税務署OBでもそうじゃなくても、自分たちに合う税理士を見つけることが大事
いかがでしたか?
税理士選びの際に重要なのは、税務署OB税理士かどうかではなく、自分たちの目的に合っているかどうかということです。
雰囲気や人柄も重要な要素になりますので、できるだけ複数の税理士と面談して契約する税理士を選びましょう。
おすすめの税理士紹介サービス
経験・知識・人柄の審査で厳選された税理士の中から、ピッタリの税理士を紹介してくれるサービスです。
専任のエージェントがあなたの代わりにより良い条件を交渉してくれます。
>> 税理士紹介エージェントの口コミ・特徴を詳しく知りたい方はこちら
全国の登録税理士数なんと6,700人以上!合う税理士が見つかるまで何度でも紹介してくれます。
報酬引き下げの実績も多数あり。上場企業が運営していて安心のサービスです。
>> 税理士ドットコムの口コミ・特徴を詳しく知りたい方はこちら
柔軟・迅速・丁寧という独自の審査をクリアした税理士のみを紹介してくれるサービス。
紹介税理士との顧問契約が決まったら、成約祝い金がもらえる嬉しい特典つき!
利用はすべて無料!
複数のサイトに登録して、選択肢を増やすのがおすすめです。
コメント