経理や税務・申告を税理士にお願いしている方の中には、税理士報酬って高い……と思っている方も多いのではないでしょうか。
自分では難しいことを頼んでいるから仕方ないと思う反面、事業をしている限り少しでも経費を抑えたいというのが本音ですよね。
今回は、どうにかして税理士報酬を安くしたい!とお考えの方向けに、税理士事務所勤務歴5年の私から税理士報酬を下げる方法をご紹介します。
この方法で必ず税理士報酬が安くなるわけではありませんが、交渉材料としてこんな手段があるということを知っているだけで、税理士との話がしやすくなるかと思います。
どうぞ最後までご覧ください。
- 税理士への報酬をもう少し安くしたい
- 税理士報酬はどうしてこんなに高いのか知りたい
きくたがわ
大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。
税理士は報酬を下げたがらないもの
前提としてお伝えしたいのが、税理士は報酬を下げたがらないものだということです。
税理士報酬に対する不満としてよくあるのが、
利益が良かった頃に税理士報酬アップを提案されて受け入れたが、その後あまり利益が出なくなっても報酬を下げる提案はしてこない
というもの。ここからわかるように、基本的に税理士から報酬を下げる提案をすることはありません。
しかし、冷静に考えればこれは当たり前のことではありませんか?
普通のサラリーマンでも、特段理由なく自ら「給与を下げてくれませんか?」と会社に申し出ることはほぼないと思います。
事業をしている方なら、自分の貴重な売上を人に頼んでまで減らすことはないとお分かりいただけるでしょう。
つまり、報酬を下げる提案をしないのは税理士の意地悪でもなんでもありません。
ですので、税理士報酬を下げてほしい場合は顧客側から提案して交渉するしかないのです。
税理士への報酬を下げる方法4つ
ここからは、税理士報酬を下げるために税理士へ提案できる方法を具体的に4つご紹介します。
税理士の報酬は、顧問先の売上高、業種、従業員数、請け負う業務、作業量などを考慮して決まっていることが多いものです。
売上高、業種、従業員数などは事業主がどうにかできるものではありませんので、「請け負う業務」と「作業量」を材料に交渉するのが現実的です。
これから紹介する4つはすべて、税理士へ依頼することを減らし自社ですることを増やす方法となっています。
難易度の低い順にご紹介します。
- 税理士に来てもらうのではなく事務所へ出向く
- 試算表の提供頻度を落とす
- 会計ソフトへの入力作業を自社で行う
- 年末調整などスポット業務を自社で行う
税理士に来てもらうのではなく事務所へ出向く
財務資料の回収や試算表をもらうため、税理士や税理士事務所の担当者にいつも来てもらっているという方は、自分が事務所へ出向くという方法をまず検討すると良いでしょう。
税理士事務所の人間がお客様の事業所へ行くとなると、移動時間もかかりますしその間何も作業ができません。
税理士事務所へ来てもらえるようになるだけで、手が止まる人間の数が減るのです。
他にも、資料のやり取りを郵送もしくはメール・チャットサービスを使ってデータで済ませるという手段もあります。
特に税理士事務所から遠方にある事業所であればあるほど、効果的だと思います。
ただし、これだけで大幅な報酬減は見込めないでしょう。
逆に人の行き来がなくなっただけで「1万円減らします!」と言われたら、それはそれでちゃんと税務をやってくれているのか心配ではありませんか?
大きな報酬減を交渉したい場合は、他の手段と合わせて提案するのが良いかと思います。
試算表の提供頻度を落とす
毎月資料を提供して試算表をもらっているという方は、その試算表をもらう頻度を落とすというのも1つの手です。
税理士事務所の職員にとって毎月資料を預かれるのは大変ありがたいことですが、毎月試算表を持っていくことは時期によって負担にもなります。
お客様にもよりますが、毎月期日を決めて訪問するよりも2~3ヶ月の間でゆとりをもって日程を決められる方が助かる場合もあるのです。
特別な理由がない場合は、毎月ではなく2~3ヶ月に1回、あるいは半年に1回試算表をもらうことを提案してみてはいかがでしょうか。
資料や試算表のやり取りのための訪問も減りますし、税理士事務所側が作業するタイミングを選びやすくなるメリットもあります。
ただしこの方法には注意点もあります。下記の中に不安要素がないか確認しておきましょう。
- 仕訳量や作業量が多い会社・事業だと断られてしまう可能性がある
- リアルタイムに近い財務状況の把握ができなくなる
- 決算前の節税対策や税金の概算計算が難しくなる
- 金融機関に毎月試算表を提出するなどの予定がある場合は対応策を考えておく
- 毎月の資料準備をしなくなるためだんたん資料準備がおっくうになってしまう
この5つは税理士事務所側も理解していますので、お客様から申し出があった場合試算表提供の頻度を落としても大丈夫そうか、これらを基準に考えます。
この中に1つでも困る事項があれば、別の方法で報酬ダウンを交渉する必要が出てきますね。
会計ソフトへの入力作業を自社で行う
会計ソフトへの入力作業もすべて税理士事務所にお願いしているという方は、その入力作業を自分たちでするというのも交渉材料になります。
会計ソフトへの入力を税理士事務所ですることを記帳代行と呼びますが、この記帳代行が税理士事務所職員の業務の中で大きな割合を占めています。入力作業専門の職員もいるくらいです。
お客様が自社ですべて入力してくれていれば、入力作業専門の職員の労力をかけずに済みます。
また担当者や税理士の監査のみになりますので、財務資料提供から試算表が出来上がってくるまでの時間も短縮になります。
そもそも、自社で精度の高い記帳ができていれば、概算の試算表も自社で見られるようになるのです。
つまり税理士事務所としては、会計ソフト記帳をお客様自身でやってくれるようになることは、メリットが多いのです。
お客様が自身で会計ソフトへ入力し、財務状況をある程度把握できることを税理士業界では「自計化」と呼んでいます。
業界全体でお客様の自計化を目指しているのです。
とはいえ、簿記の知識や経理経験がない経営者が初めからすべて記帳というのはハードルが高いと思います。
最初は現金出納帳のみ、慣れてきたら預金通帳も、さらに慣れてきたら現預金以外も……と段階を踏んでやってみるという手もあります。
自分たちで記帳できるようになりたいという申し出を理由なく断る税理士事務所はないと思いますので、興味がある方は1度相談してみると良いと思います。
スポット業務を自社で行う
税理士事務所の業務には、通常業務である財務の月次監査や給与計算の他、年に1度行う年末調整などのスポット業務があります。
こういったスポット業務を依頼せず、自社でするという手段もあります。
これらの業務は、税理士事務所によって月次顧問料に含まれていたり、別途報酬が発生していることもあると思います。
しかし共通して言えるのは、「報酬を明確に請求されている作業分を自社で行うので報酬を下げてほしい」という交渉は道理が通っているため、断られにくいということです。
これを交渉するのを機に、税理士報酬をどのように設定しているのか聞いてみるのも良いかと思います。
ただし、当たり前ですが税理士事務所で請け負わない業務は税理士に責任を問えません。
例えば年末調整を自社ですることにした場合、税務調査で源泉所得税に関しては税理士が対応することができなくなります。
そういったリスクも理解した上で、依頼するのをやめる業務は慎重に選びましょう。
税理士報酬を下げるリスク
いくつか既に挙げていますが、税理士報酬を下げる交渉をする際はそれなりのリスクがあることを覚悟しましょう。
先ほどご紹介した税理士報酬を下げる方法4つは、難易度が低い順に書きました。
難易度が高いほど、自社で行うことに失敗したときのリスクも高くなります。
例えば会計ソフトへの入力でも、自社でやろうと意気込んだものの本業が忙しくて入力する時間を取れなかったり、簿記が理解できなくて諦めたりといった理由で断念されたお客様もいらっしゃいました。
その自社でやろうとした期間分の入力を結局税理士へ依頼した場合、普通に頼んでいた場合より税理士事務所側の負担が大きくなるため、追加報酬を請求する事務所もあるようです。
また前述の通り、税務調査などがあった場合のリスクもあります。
自社で責任を取ることを増やす代わりの報酬減なんですね。
とはいえ、残念ながら報酬の基準を明確に用意できていない税理士事務所も存在するのは事実です。
報酬を下げる交渉をしてみた結果、無事下げてもらえたり今の報酬に納得できたのであればそれに越したことはありません。
交渉にも応じてもらえず、報酬の基準をしっかり説明してくれないという場合は、最終手段として税理士を変えることも検討して良いと思います。
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長いお付き合いの税理士であれば簡単に変える決断はできないと思いますが、双方にとって大事なお金のことです。
お互い納得したうえで気持ちよくやり取りするため、まずは一度担当者を通じて相談してみるのが良いと思います。
まとめ:自分たちの負担とバランスを取ろう
いかがでしたか?
税理士報酬を下げる交渉において大事なのは、自分たちが負う責任や負担とのバランスをしっかり考えることです。
本業に割いている時間と経理作業に取れる時間をしっかり考え、こちらの材料をしっかり用意したうえで交渉に臨みましょう。
もちろんこの記事を読んで「そんなに報酬高くないかも……」と思っていただけたなら、元税理士事務所職員としてはありがたい限りです(笑)
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