失業手当をもらいながら扶養に入れる?収入要件と注意点を解説

失業手当をもらいながら扶養に入れる?収入要件と注意点を解説

退職して失業手当をもらい始める予定だけど、扶養って入れるんだっけ?

扶養に入ると得だって聞くけど、退職して扶養に入ると何が得なの?

退職が決まると精神的にほっとする反面、まず心配なのはお金のことですよね。

少しでも金銭的負担を減らすため扶養に入りたい!でも失業手当って収入になるんじゃ……?

そう考えたあなたのために、今回は失業手当をもらいながら扶養に入るための収入要件や注意点を解説します。

この記事でわかること
  • 「健康保険の扶養」と「所得税の扶養」の違い
  • 健康保険・所得税それぞれの扶養に入れる収入要件
  • 健康保険・所得税それぞれの扶養に入るときに注意すべきこと

この記事を読んでおけば、退職後の貴重なお金を無駄にせずに済みます!

事前にどうするかしっかり決めておいて、すぐに手続きのための行動ができるよう準備しておきましょう。

この記事を書いた人
きくたがわ

きくたがわ

大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。

目次

「健康保険の扶養」か「所得税の扶養」どっちの話かによる

結論から言うと、扶養に入れるかどうかは「健康保険の扶養」か「所得税の扶養」どっちの話かによって変わってきます。

それぞれに細かく条件がありますが、まずはそもそもこの2つの違いが何なのかを解説しますね。

健康保険の扶養とは

健康保険の扶養とは、家族などが会社で加入している健康保険に被扶養者として入ることです。

健康保険の扶養に入ると、扶養してくれる人の会社から保険証をもらえます。

扶養に入らないで保険証を手に入れるには、自分で国民健康保険(国保)に加入するか、退職した後20日以内に任意継続の手続きをする必要があります。

国保も任意継続も自分で保険料を払う必要がありますが、扶養に入ると保険料を払う必要がなく、扶養に入れる側の保険料負担額も変わりません

つまり金銭面でお得なので、退職後は健康保険の扶養に入れてくれる家族がいるなら入るのがおすすめです。

手続きは扶養に入れてくれる家族の勤め先がしてくれるので、退職後すぐに家族にお願いしましょう。

所得税の扶養とは

所得税の扶養とは、所得税で税額を計算するときに数える扶養の人数に入れてもらうことです。

所得税の扶養に入ることで、扶養している側の給与から差し引かれる所得税が安くなります

扶養に入れる側の手取りが増えることになりますので、こちらも金銭的にお得です。

こちらは年末調整までに扶養に入るかどうか決めればいいので、急いで家族の会社に手続きを依頼する必要はありません。

扶養に入れると毎月の給与から引かれる所得税が安くなるというと、すぐ扶養に入れないと損だと思うかもしれません。
しかし年末調整のときに扶養に入れたいと申し出れば、本来安くなっていたはずの所得税もちゃんと年末調整で還付になります
年末調整までに申し出れば損することはないので、安心してくださいね。

年内に再就職すると扶養に入れない可能性もあるので、年末まで様子を見てから決めるのがいいですよ!

失業手当をもらいながら健康保険の扶養に入れる?

ではまず、失業手当をもらいながら健康保険の扶養に入れるかどうかを説明します。

健康保険の扶養に入れる収入要件は、今後1年間の収入見込みが130万円未満(※)であることです。

※扶養に入りたい人が60歳以上、または障害厚生年金をもらえる程度の障害がある場合は180万円未満

この大前提を元に、失業手当をもらう場合の具体的なケースで考えてみましょう。

失業手当の日額が3,611円以下なら扶養に入れる

失業手当をもらう場合、もらえる金額の日額が雇用保険受給資格者証に書かれています。

赤い四角で囲んだ「基本手当日額」という欄ですね。

失業認定日に手続きすると、この日額×認定日数の金額を受給できます。

この欄に書かれている金額が3,611円までであれば、健康保険の扶養に入ることができます。

3,611円×30日×12ヶ月=1,299,960円 ……130万円未満なのでOK
3,612円×30日×12ヶ月=1,300,320円 ……130万円を超えるのでNG

31日の月は?と思った方の疑問に答えると、失業手当は通常30日ごとの給付になるのでこの計算になります。

失業手当の手続きが済み、雇用保険受給資格者証をもらったらまず基本手当日額を確認しましょう。

日額が3,612円以上でも、扶養に入れるケースを次に紹介します。

自己都合退職による給付制限期間中は扶養に入れる

失業手当の日額が3,612円以上の場合でも、自己都合退職による給付制限期間中は収入がないと見なされますので、扶養に入ることができます

自己都合による退職で失業手当の手続きをすると、2ヶ月(または3ヶ月)の給付制限期間が設けられます。

つまり2ヶ月(または3ヶ月)の期間は失業手当を受け取れないため、収入がないと判定されるんですね。

解雇や事業縮小など会社都合での退職だと給付制限期間がなく、すぐに失業手当をもらい始めることができます
その場合は、日額3,611円以下でなければ扶養に入れませんので要注意!

給付制限期間は、先ほどの雇用保険受給資格者証の裏面にこのように記載されます。

この画像の場合は、退職した日から4年7月8日までは扶養に入れます。そして、給付期間が始まる7月9日からは扶養を外れ、国保に切り替えなければいけません。

無職期間は少しでも支出を減らしたいものですよね……2ヶ月でも扶養に入れるなら入る方が、金銭的負担は軽くなります。
もちろん就職したらすぐに扶養を外れましょう。

失業手当ではなく高年齢求職者給付金なら扶養に入れる

退職し扶養に入りたい人が65歳以上で、もらうのが失業手当ではなく高年齢求職者給付金なら、金額に関係なく扶養に入ることができます。

高年齢求職者給付金は、65歳以上の人が退職して失業手当の手続きをすると受給できる「失業手当みたいなもの」です。

失業手当と違って30日ごとに数ヶ月間もらえるのではなく、一括で決まった金額をもらえます。

一括でもらえるので継続した収入とは見なされず、退職金のような扱いにされるらしいです。

ただし65歳以上だと年金の受給がすでに始まっている可能性がありますので、扶養に入りたい場合は年金額が1年で180万円を超えないことが条件になります。

こちらも気をつけて確認しましょう。

失業手当をもらいながら所得税の扶養に入れる?

次に、失業手当をもらいながら所得税の扶養に入れるか解説します。

所得税の扶養に入れる収入要件は、その年の1月~12月の所得が

  • 配偶者以外の場合……48万円以下(給与収入のみなら103万円以下)
  • 配偶者の場合……133万円以下(給与収入のみなら201万6,000円未満)

であることです。

・健康保険の収入要件は「扶養に入る日から先1年間の収入見込み」
・所得税の収入要件は「その年(1月~12月)の収入」
です。微妙に違うので混同しないよう注意しましょう!

退職して失業手当をもらう場合はどうなるのか、こちらも見てみましょう。

今回はわかりやすいように、配偶者以外の扶養に入る(103万円以下)場合で考えます。

失業手当がいくらでも所得税の扶養は入れる!

所得税の扶養のほうは、健康保険の扶養と違って「失業手当がいくらか」という制限はありません

1月~12月に失業手当を合計103万円以上もらっていたとしても、所得として見なされないため扶養に入ることができます

失業手当は所得税のかからない「非課税収入」なので、所得税の面では収入として扱われないのです。

就職していた間の給料が年103万円を超えないかだけ要注意

ただし、就職していた間の給料で103万円をすでに超えていたら扶養に入れませんので注意しましょう。

所得税の収入はあくまでも「その年(1月~12月)の収入」が基準です。

  • 月給30万円の人が3月に退職 → 30万円×3ヶ月=90万円 → (今のところ)扶養に入れる
  • 月給30万円の人が4月に退職 → 30万円×4ヶ月=120万円 → 扶養に入れない

ということになります。

ただし退職した会社の締日や支給日によって上記のように単純に計算できないこともありますので、退職時にもらう源泉徴収票を必ず確認しましょう。

赤い四角の欄が、その年の1月から退職日までに支払われた給与の金額です。

この金額がすでに103万円を超えていたら、その年の所得税の扶養には入れません。

103万円以下で、12月31日までに再度就職せず失業手当以外の収入がない状態が続く場合は、扶養に入れます。

年内に再就職できて累計で103万円を超えるとやはり扶養には入れないので、所得税の扶養は退職直後に申し出るのではなく、年末調整の時期に申し出る方が余計なやり取りが増えずに済みますよ。

健康保険の扶養は保険証をもらうためにすぐ手続きしてもらう必要があります!
所得税の扶養は10~11月に年末調整のお知らせが来たら検討しましょう。

まとめ:健康保険の扶養はすぐに要チェック!所得税の扶養はゆっくり確認

「扶養に入る」というと「収入がいくらまでならOKか」にばかり目が行きがちだと思います。

しかし今回解説した通り、収入が失業手当のみになる場合、金額だけで判断すると損をしてしまう可能性もあるのです!

まずはハローワークで失業手当の手続きを済ませ、雇用保険受給資格者証を見ながら1つずつ判断していきましょう。

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