簿記取得と実務経験どっちを優先すべき?理論と実務の違いを解説

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簿記取得と実務経験どっちを優先すべき?理論と実務の違いを解説

未経験で簿記を持っていないけど、経理事務へ転職したい!

こんな希望をお持ちの方は、必ずどこかのタイミングで「簿記を取ってから転職活動」か「転職してから簿記を取る」かで迷うのではないでしょうか。

今回は、経理系事務や税理士事務所へ転職する場合、簿記の取得と実務経験どっちを先にすべきか?という疑問にお答えしたいと思います。

私は実際に未経験・簿記未取得で税理士事務所へ転職していますので、そのとき体験したことを元に解説したいと思います。

お悩みの方はぜひ最後までご覧ください。

この記事を書いた人
きくたがわ

きくたがわ

大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。

目次

結論:同時進行できるのがいちばん理想だが、現実は簿記優先

簿記の取得と実務経験のどちらを優先すべきか、という問いに対する結論は「同時進行できるのがいちばん良い」になります。

経験者は全員同意してくれると思いますが、簿記と実務は同時に進めてこそブラッシュアップされやすく、真価を発揮するものです。

しかし実際問題、経理職に就職するには簿記を持っていないと話にならないような実態もあります。

ですのでいちばん現実的なのは「簿記を勉強しながら転職活動し、簿記取得が先になったら知識が薄れないうち(半年程度以内)に転職する」だと思います。

また経理の仕事の大部分は簿記なので、まず簿記を勉強して自分で適性を見極めるという意味合いにもなって理想的ですね。

簿記を勉強してみて楽しいと思えたら、経理の仕事は楽しいと思います!
逆に簿記をつまらないと感じたら、経理への転職はやめた方が良いかも……

簿記の取得を優先した場合

ここからは、簿記の取得を優先した場合に実務経験で役に立つことをご紹介します。

経理事務や税理士事務所では、なぜ簿記取得済みの人を優先・優遇するのでしょうか?

基本的な簿記知識を教える必要がないため重宝される

まずは何よりも、基本的な簿記のことを教える必要がないという採用する側の最大のメリットです。

このために簿記取得済みの人を優先して採用している、と言っても過言ではありません。

一般企業の経理事務でも税理士事務所でも、たいていは業務が忙しく人員も最低限で回しているため教育に時間を割く余裕がありません

そんな状況の中で、借方・貸方もわからない人を採用するのはさすがに難しいのです。

借方・貸方各勘定科目の意味仕訳の切り方を理解しているだけである程度の仕事はできます。

よって、できるだけこれらの記憶が新鮮なうちに実務経験を積むのが、働く側としてもスキルの定着に良いと思います。

会計ソフトの入力に悩まない

経理事務・税理士事務所での仕事は、会計ソフトへの入力が大部分を占めると思います。

簿記の知識があれば、先ほどの借方・貸方や勘定科目の他、総勘定元帳や現金出納帳、合計残高試算表などの言葉をスムーズに受け入れられます

簿記を勉強していない場合、これらの帳票が何者なのかわからないまま仕事することになりますよね。

似たような名前の帳票も多いので、暗号を覚えるような状態になってしまいます。

そうなってしまうより、事前にどういうものか知っておくほうが確実に早くソフトに馴染めると思います。

後述しますが、簿記をきちんと勉強したあとに会計ソフトを使うとその便利さに感動すると思いますよ。

実務経験を積むことを優先した場合

ここからは、実務経験を積むことを優先した場合のメリットをご紹介します。

私は簿記の勉強をしている段階で税理士事務所へ入社したので、実際に実務を先に経験しているわけではありません。

ですので厳密には「先に簿記を勉強した人間目線での実務との違い」の紹介になります。

よく使う内容から覚えられる

実務から入ると、よく使う内容から覚えることができるのがメリットのひとつです。

たとえば、簿記を勉強していると膨大な量の勘定科目を覚えなければなりません。

しかし、その膨大な科目には「絶対にどの会社でも使う科目」「会社によっては使わない科目」「ほぼどの会社でも使わない科目」が混在しているのです。

たとえば、日商簿記3級から登場するクレジット売掛金社会保険料預り金所得税預り金といった科目を実際に使っている会社を私は見たことがありません。

簿記実務
クレジット売掛金  → 売掛金
(補助科目:クレジットカード会社名)
社会保険料預り金  →預り金
(補助科目:社会保険料)
所得税預り金  →預り金
(補助科目:所得税)

実際は表のように、売掛金を使い補助科目にクレジットカード会社名を設定したり、預り金補助科目に社会保険料や所得税を設定したりしていました。

このように実際に使っているものから覚えたり、包括してイメージづけて覚えられるのは実務と勉強を同時に進めるメリットだと思います。

しかし実務に出てくるものから覚えられるということは、裏を返せば実務に出てこない内容は覚えにくいということでもあります。

また2級で多くの人を苦しめている本支店会計連結会計処理をしている会社は、私がいた税理士事務所のお客様には1社もありませんでした。(地方でお客様が中小企業のみだったため)

実務にあまりない内容を勉強するのは退屈かもしれませんが、ちゃんと理解していると昇進や転職で強みになります!

転記など余分な作業を覚えなくて良い

簿記を勉強している人なら、仕訳から総勘定元帳への転記総勘定元帳から残高試算表への転記が面倒だと思ったことはありませんか?

実務で会計ソフトを使うと、この転記作業が一切必要ありません。

パソコンを使えば間違いなく確実にできる作業を、資格試験では手作業でさせているというわけです。

簿記で転記作業をするたびに借方貸方間違いや数字の書き間違いをしていた私は、初めて会計ソフトを使ったときものすごく感動しました……!

同時に「あの作業いらんのかーい」とも思いましたが(笑)

手作業で仕組みを理解することはもちろん大事ですが、実務ではパソコンがやってくれる作業の勉強に時間をかけるのはもったいないですよね。

実務経験があるからこそ、簿記で力を入れて勉強すべきところを選び取れるケースもあるのです。

(簿記では省略されている)税金の計算等を正しく覚えられる

これは税理士事務所での業務に限るかもしれませんが……

簿記の学習では税金の計算を簡略化しています。

そのため、簿記で習った通りの仕訳を切ると税務上は誤りになってしまうことがあるのです。

実務から入っていれば、その点をつまずくことはなくなるので安心できるポイントですね。

例えば、決算時に仮受消費税と仮払消費税を精算して当期分の未払消費税を計上する仕訳は下記の通りです。

仮受消費税 100円 / 仮払消費税 80円

            未払消費税 20円

しかし実務でこの仕訳にしてしまうと誤りです。

実際の消費税額は消費税の申告書で計算します。単純に差額というわけではないのです。

申告書でもいちばんシンプルな計算方法なら、確かに仮受消費税と仮払消費税を相殺するようなことをするのですが、それでも計算の過程で少額のズレが発生するのです。

よって実際に切る仕訳の多くは↓こんな感じになります。※金額はあくまでもイメージです

仮受消費税 100円 / 仮払消費税 80円

            未払消費税 18円

           雑収入   2円

このように、簿記では深く掘り下げられないため簡略化している論点がいくつかあります。

そういった税金の計算などの内容は、実務で触れて初めて正しい形を知ることができるのです。

まとめ

いかがでしたか?

結局のところ、実際に仕事をするためには簿記・実務経験どちらも必要で、相互に少しずつレベルアップしていくものだということが伝われば幸いです。

経理への転職を目指す方は、簿記を取ることが最終目標になってしまわないよう気をつけてくださいね。

また経理に転職できた人もそこで満足せず、簿記の3級、2級とぜひ頑張ってみてください。きっと仕事がもっと面白くなりますよ。

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