皆さま、日々のお仕事お疲れ様です。
今年も間もなく確定申告の時期がやってきます。1年分の資料集めと集計作業に、四苦八苦している方も多いことでしょう……。
実は、確定申告の白色/青色決算書を作るときに悩まなくていいポイントがあるのをご存じですか?
それは科目の選び方。一定のルールさえ守れば、科目選びに悩む時間をごっそり減らすことができちゃうんです。
今回は、事業収入で確定申告をする方向けに科目選びを楽するコツをご紹介します。
- 確定申告の集計に毎年時間がかかる
- 確定申告の時期になって「この支出の科目は何だろう……」と悩む
- 確定申告の時期に簿記をちゃんと理解していないことを後悔する
確定申告は正しく税金を納めるために大切な作業です。
しかし誤った申告や脱税を恐れるあまり、過度に時間をかけすぎている人もいるという事実……。
今回は税理士事務所に5年間勤めていた私の経験から、正しい申告をするのは大前提で、その上で楽できるポイントをお伝えしたいと思います。
きくたがわ
大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。
「資産」「負債」「収益」「費用」の枠を超えなければだいたいOK
確定申告のために集めたレシートを見て「これは何の科目にすればいいんだろう……」と悩んでいる方。
Google先生に聞いてみたものの、答えが複数あって結局どれにすればいいかわからない……という方。
今日からは科目名で悩まなくてOKです。なぜなら、ほとんどの科目は科目名を間違えても税金計算に影響がないから。
勘違いされている方も多いのですが、税務署が「この支出は消耗品費ではなく事務用品費ですよ!」みたいな注意をしてくることはありません。
注意される(税金計算に影響が出る)のは、「資産」「負債」「収益」「費用」の枠を超えて科目を間違えている場合です。
たとえば「売上(収益)」にしなければいけない収入を「借入金(負債)」にしているとか。
ですが、そんな間違い方はほぼしませんよね?
資産や負債という言葉は簿記が苦手な人にとっては嫌な単語かもしれませんが、青色申告で複式簿記を選択している人でない限りあまり気にする必要はありません。
全員が気にするべきなのは「収益(収入に関する科目)」と「費用(支出に関する科目)」です。
どちらの科目を選んでも良い例
では、具体的に「どちらを使うか」で悩まなくて良い例をご紹介します。
- 臨時的な収入……売上高か雑収入(どちらも収益科目)
- ガソリン代……旅費交通費か車両費(どちらも費用科目)
- 後からまとめて入金になる売上の相手科目……売掛金か未収入金(どちらも資産科目)
- 後からまとめて払う経費の相手科目……買掛金か未払金(どちらも負債科目)
このように、同じグループの中の科目ならどちらを使っても良いものは結構あります。
もちろん厳密には使い分けの基準はありますが、簿記のプロになりたい人でなければ気にしなくても大丈夫。
どちらの科目を使ってもいいとは言え、1つの内容が複数の科目で計上されているのは望ましくありませんので、「この内容はこの科目で計上する」と決めてそれを継続すればOKです。
特に費用科目は種類も多いので、細かく使い分けるよりも、大まかにまとめて使う科目を少なくする方が管理しやすいこともあります。
一緒にしようと思う人はいないと思いますが、同じ資産科目だからといって「現金」と「普通預金」を一緒にしてしまうのは良くありません。
普通預金のような「調べれば一発で残高がわかる資料がある」資産負債科目は、他の科目で代用しようとしない方が無難です。
じゃあどうして科目を分けるの?
どちらを使っても良いならどうして科目を分けるのかというと、以下のような理由があります。
- 内容の違いを科目名で分けるため
- 事業主が管理しやすいようにするため
- 税務署が同業種などで比較しやすくするため
- 消費税区分を間違えないようにするため
例えば先に挙げた消耗品費と事務用品費でいうと、文房具代を消耗品費にしている事業主もいれば事務用品費にしている事業主もいます。
これはその事業主が「そうしたいからそうしている」というだけです。
家計簿でも、「外食費」を「食費」に含めるか分けるか、人によって意見が分かれると思います。
上に挙げた例は、そんな程度の話だと思っていただいて大丈夫です。
もちろん簿記論や財務諸表論としては科目ごとに意味はきちんとありますが、そこまで完璧に理解して申告できるなら税理士になれちゃいます……
また先ほどの説明を読んだ方の中には「じゃあ経費は全部雑費でもいいのでは?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
答えはNOです。年間の売上100万円に対し、他の科目が何もなく雑費だけ70万円だったら、税務署はかなりの確率で目をつけるでしょう。
それは極端な例ですが、税務署が税務調査をする事業所を選ぶ際参考にするのが決算書のバランスです。
同業種や同規模の事業所と比較し、極端におかしな数字になっているところには調査が入りやすくなってしまう可能性が高いですね。
個人事業主に税務調査が入る確率は0.5%~1%と言われていますが、不自然な決算書を作るとその低確率の中に自分が入ってしまう可能性を上げることになります。
そして消費税を納めている事業主さんであれば、会計ソフトで科目ごとに消費税区分を設定していると思います。
その場合は「科目を間違う=消費税区分を間違う=消費税額を間違う」ことにつながりますので、先ほど書いた話とは違って「科目を間違う=税金計算を間違う」ことになってしまいます。
つまり、科目をしっかり分けると「自分のわかりやすさ」と「正しい納税」、そして「調査からの自衛」につながるということです。
これだけ気をつけて!同じ枠でも間違えてはいけない科目
ここからは同じ費用科目の中でも他と混同してはいけない科目を、理由とともに紹介します。
意味や言葉が似ていて間違いやすいものもありますが、多くはありませんのでぜひ覚えましょう。
間違えてはいけない科目に共通するのは、「間違えると税金額に影響があるかもしれない」ということです。
給与と外注費
給与と外注費は、誤りやすい上に税務調査では見られやすい科目なので気をつけましょう。
給与は雇用契約を結んだ人に支払うお給料です。
給料の金額そのものの誤りを指摘されるというよりも、給料に付随する源泉所得税をきちんと徴収して納付しているかをチェックされます。
白色/青色決算書には給料を支払った相手の名前や生年月日を記入する欄がありますよね?
あれは源泉所得税の把握のためにかかせているんです。
外注費は業務委託契約を結んだ人に支払う報酬です。
給料と違って源泉所得税を納めなくて良いケースもありますが、内容によっては報酬の源泉徴収をする必要があります。
また給料は消費税対象外ですが、外注費は消費税課税です。つまり科目を誤ると消費税額に影響が出ます。
この2つを間違えると、源泉所得税や消費税に影響が出るため気を付けなければならないということですね。
法定福利費と福利厚生費
法定福利費と福利厚生費は、似た言葉なので経理に慣れていないと間違いやすいと思います。
ですが経理に慣れた人からするとまったくの別物なので、要注意の科目です。
法定福利費は、従業員を雇ったときに発生する社会保険料や雇用保険料の事業主負担分を計上する科目です。
つまり社会保険や雇用保険をかけている従業員がいないのにこの科目が使われていたら、ほぼ間違いだとすぐわかります(例外はありますが)。
もしくは社保雇保をかけている従業員がいる場合でも、給与から大体の法定福利費を計算できるため、計上を大きく誤っていたらやはりすぐわかります。
福利厚生費は、従業員のために支払う給与ではない費用に使う科目です。
例えば健康診断を受けさせたり、新年会や忘年会などの懇親会費が福利厚生費に当たります。
どちらも従業員がいなければ出てこない科目ですが、うっかり誤りやすい科目。
また法定福利費は消費税非課税、福利厚生費は食事代などであれば消費税課税ですので、こちらも消費税誤りにつながる可能性があります。
租税公課
他の科目と誤りやすいわけではありませんが、大事なのが租税公課。
こちらは事業税、自動車税、印紙代など税金を納めたときに使う科目なので、もしも知らずに税金関係を別の科目で計上しているとこれまたすぐわかります。
税金を納めているはずの事業主の決算書に租税公課が出てこない=この人は簿記に詳しくない、間違いが多いかも!と思われてしまう、ということです。
先ほどの法定福利費もですが、「見る人が見れば間違いだとすぐわかる科目を間違っていると目をつけられやすい」と思っていただければOKです。
ただし、要注意なのが確定申告で納める「所得税」。
これだけ言っておきながら、確定申告で納める所得税は租税公課で計上してはいけません。
確定申告での所得税を納付した場合の仕訳は下記のとおりです。
つまり所得税は経費になりませんので、ご注意ください。
消耗品費と器具備品
最後に、同じ枠ではないのですが、いちばん間違えてはいけないものをお伝えします。
それが消耗品費と器具備品。消耗品費は費用科目、器具備品は資産科目です。
消耗品費とは、イメージ通り日常的に使う消耗品を買ったときに使う費用科目のこと。
ですが、1つにつき10万円以上の消耗品を買った場合は器具備品という資産科目で計上しなければなりません。
例えばよくあるのがパソコンを買ったとき。1台8万円のパソコンを買ったときは消耗品費で良いのですが、1台10万円のパソコンを買うと器具備品にしなければならないのです。
同じものを買っても金額で変わるなんて、ややこしいですよね。
器具備品に計上したあとは、減価償却費という費用科目を計上する必要があります。
先ほどの例でいうと、購入した10万円すべてが減価償却費にはなりませんが一部の金額が経費になります。
「1つにつき10万円以上のものを器具備品ではなく消耗品費にし、利益を少なくした=納税額を少なく申告した」という指摘を税務署から受けて追徴課税になるというのは、個人事業主だけでなく法人でもあるあるです。
10万円以上のものを買うときは消耗品費にできないことを念頭に置き、いくら減価償却費にできるかを事前に調べてから購入しましょう。
まとめ:コツを覚えれば確定申告は怖くない
いかがでしたか?
悩んでいたところは気にしなくていいところだった!という方は、今年からサクサク集計して進めてしまいましょう。
気をつけるべきポイントをもう一度おさらいします。
- 「資産」「負債」「収益」「費用」の枠を超えなければだいたいOK
- 「給与と外注費」「法定福利費と福利厚生費」「租税公課」「消耗品費と器具備品」には要注意!
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