税理士事務所の求人、規模が大きい事務所と小さい事務所のどちらに応募しようか迷っています……
税理士事務所に転職したい方は、どの程度の規模の税理士事務所なら安心して働けるか気になりますよね。
未経験の方であれば、そもそも税理士事務所の規模がどんなもんなのかわからない方もいるでしょう。
今回は、税理士事務所の規模による特徴と働きやすさの違いを解説します。
「大きい会社なら安心」とか「大手なら働きやすい」とは限らないのが税理士業界。
この記事を読んで、ぜひ自分に合った規模の税理士事務所を見つけてくださいね。
- 税理士事務所は5人以下の事務所が最も多く、20人を超えるとそれなりの規模
- 自分が働きやすいと思う要素がどちらに多くあるかを整理するのがおすすめ
- 大規模・小規模どちらの要素も入り混じっている事務所もあるので、人数だけで判断しないこと!
きくたがわ
大学卒業→税理士事務所勤務(5年)→残業しない事務員(現在)。
税理士事務所勤めの間に身につけた仕事・お金の知識や、残業しないための事務仕事の知恵を発信中。
税理士事務所の規模目安
まずは税理士事務所の規模がどの程度で分類されるかをご紹介します。
応募を迷っている求人の人数を見て、当てはまるところを読めばざっくりと事務所のイメージをつかめると思います。
従業員1~5人のほぼ個人事務所
全税理士事務所の中で最も割合が多いのはこの層です。
所長税理士1人で創業し、時には家族に手伝ってもらいながら回していたところ、ちょっと人手が足りなくなってきたので1~2人パートさんにお願いしている、といったケースが多いでしょう。
所長税理士がメインでお客様の相手をするので、修行したい税理士やがっつりフルタイムで働きたい正社員を募集することはあまりないかもしれません。
従業員10人前後のアットホーム事務所
徐々に顧問先が増えてきて、正社員を数人採用し始めるとこのくらいの規模になってきます。
修行したい税理士や税理士志望の人を受け入れやすいのもこのくらいの規模からですね。
組織としては未成熟なのでまだまだ所長単体の色が強く、家族経営感は消えていない事務所が多いと思います。
従業員20人~50人の成長期事務所
この層にある事務所は、大きくなっていきたい成長段階の事務所が多いです。
従業員が20人を超えたあたりで税理士1人では回しきれなくなってきて、税理士を増やして税理士法人化する事務所も多くあります。
中途採用だけでやってきた事務所でも、新卒採用を意識し始めるのもこのくらいの規模からだと思います。
従業員50~100人の安定事務所
ここまでくるとかなり安定した事務所と言えるでしょう。
税理士だけでなく、公認会計士事務所が併設されているところも多くなってきます。
地方によってはこの規模の事務所が最大規模というところもありますね。
調べたところ、私が住んでいる都道府県では100人超の税理士事務所(税理士法人)はなさそうでした。
従業員100人超の大規模事務所
この規模はもう税理士事務所の中でも大手と言えます。
大都市にしかない規模で、全国からの新卒採用体制もすでにしっかりしているような大手企業です。
従業員500人以上のBIG4
税理士事務所業界最大手は、BIG4と呼ばれる4つの税理士法人(PwC税理士法人、KPMG税理士法人、デロイトトーマツ税理士法人、EY税理士法人)です。
世界規模で仕事をする事務所なので、私のような田舎の凡人には正直まったく仕事の想像がつきません。
ここから先は、ボリューム層である従業員100人以下の事務所の特徴を書いていきますね。
大きな税理士事務所ほど見られる特徴
ここから、従業員数が100人に近い大きな事務所ほど見られる特徴をご紹介します。
教育体制がしっかりしている
従業員数が多いほど、教育体制がしっかりしているところが多くなってきます。
初任者向け研修やスキルアップ研修などの研修制度が充実していたり、入社後のフォロー体制があらかじめ決められていたりと整っていることも多いです。
未経験で入る場合はとても安心できる要素の1つですね。
仕事の評価基準が明確
規模の大きな事務所ほど、仕事に対する評価基準が明確です。給与体系やランク付けの制度もしっかりしているケースが多いでしょう。
「○件以上の担当を持ち、年間顧問料○円以上を稼げていたら○ランクに昇格」といった基準を設定するのが一般的です。
「この仕事をしているからこの給料」とわかりやすいのがメリットですが、頑張ってもその壁を越えられなければ給料が上がらない(他のことで加点されない)のがデメリットとも言えます。
細かく分業化されている
人数が多い事務所ほど、細かく分業化されている場合もあります。
法人監査部門、個人部門、給与計算部門、相続部門、M&A部門など業務によって分かれていることもありますね。
分業化されている=体系化されているので、自分が担当する仕事の範囲がきっちり決まっています。
「決められた範囲を超えずに仕事ができる」と考えるか、「担当以外の仕事を覚えられないからスキルアップにならない」と考えるかでどちらが良いか変わってきますね。
税理士の目が行き届く先が限られている
人数が増えるほど、税理士の目が行き届きにくくなります。
個人事務所だろうと税理士法人だろうと、そこでの仕事の責任者はかならず税理士です。
しかし税理士の目が行き届きにくくなってくると、税理士ではない職員のミスが気づかれにくい環境ができてしまいます。
これは「自分のミスにしっかり気づいて注意してほしい」人にとっては良くない環境ですし、「誰かを頼るのではなく自分で責任をもって仕事をやりきりたい」人にとっては良い環境とも言えます。
言い方は悪いけど、「自分のミスを誰にもバレないように自分で何とかする」こともできちゃうわけです。
融通が利きにくい
大きな事務所になるほど、融通が利きにくいところは出てきてしまいます。
休むときは○日前までに申請して承認をもらう必要があるなど、ルールがきっちり決まっていて臨機応変な対応をしてくれないケースは税理士事務所以外でもよくありますよね。
また既存のルールが何のためにあるのかわからず形式化してしまっていても、それを実態に合わせて修正したり無くしたりと動き出しにくいのが規模の大きな事務所です。
ルールをちゃんと守る方が働きやすい人にとっては良い職場ですが、ルールに縛られると感じてしまう人にとっては働きにくいかもしれません。
福利厚生がしっかりしている
大きな事務所ほど福利厚生がしっかりしているのは税理士業界でも同じです。
大きな事務所ほど税理士受験者や簿記などの資格受験者を支援する体制が整っていて、受験費用の助成や合格祝い金、資格手当などが充実しています。
入社後に資格を取りたい人にとってはとてもありがたいポイントですね。
小さな税理士事務所ほど見られる特徴
反対に、小さな税理士事務所ほど見られる特徴も見ていきましょう。
※今は成長してある程度の規模になった事務所でも、小規模事務所だった時代はありますのでその頃の名残がないとは限りません。
教育体制が整っていない
小さな事務所ほど、教育体制には期待しない方が良いでしょう。
所内で研修などはもちろんなく、普段の業務も実践と同時に覚えていくことになります。
研修や座学が苦手な人にとっては、すぐ実務につける方が楽しく仕事ができるかもしれませんね。
何でもやる必要がある
小さな事務所ほど従業員1人1人の役割が多くなりますので、必然的にやることが増えます。
顧問先との連絡や税務書類作成など業務のメイン部分以外にも、事務所の掃除、お茶出しなどの来客対応、郵便物・宅配便の管理といった雑務もこなす必要があります。
時には所長税理士の秘書のように、所長の予定管理やお中元・お歳暮管理、方々への連絡などを任されることもあります。
これらの仕事を「メイン仕事の休憩になって楽しい」と思えるか、「メイン仕事の邪魔になる」と捉えるかで小規模事務所の向き不向きが分かれるでしょう。
仕事の評価基準があいまい
成長途中の小規模事務所では、仕事の評価基準があいまいになっていることも多いです。
従業員が1~2人だった頃の感覚で評価基準を作らないまま人数が増えてしまった、成長途中段階の事務所に多い現象です。
従業員同士の不公平感や不満が生まれやすい嫌な環境ではありますが、逆にいえば所長や実権が強い人に気に入られるように仕事をすれば評価されやすく、昇給も早いなんてこともありますよ。
評価基準があいまいなことを逆手に取ってしまうのもアリ
税理士の目が届きやすい
少人数の事務所ほど、税理士の目が全員に行き届きやすくなっています。
5人以下の事務所なら、全員が1つの部屋で仕事をしていることがほとんどですよね。
そんな環境なら、所長税理士が「誰が何の仕事をしているか」をたいてい把握できているでしょう。
1つの部屋でおさまる範囲内の従業員数なら、お客様との電話での会話も事務室内の全員に聞こえます。
その状況を「自分が間違ったことをしたら(言ったら)すぐ正してくれる」と捉えるか、「仕事中ずっと監視されているようで怖い」と捉えるかで働きやすさが違ってきますね。
融通が利きやすい
少人数の事務所なら、融通が利きやすいことも多くなります。
急に休む必要があっても口頭で済んだり、既存のルールが運用しにくくなってきたら見直して修正するのが簡単だったりします。
その時に応じたやりやすさを重視したい人にとっては少人数の職場の方が向いていると思いますが、はじめのうちは自分の意見を主張しにくい可能性も十分ありますのでご注意ください。
福利厚生が弱いことがある
小さな事務所は、福利厚生が整っていないところもまだまだあります。
5人以下の個人事務所では、加入義務がないため社会保険を適用していない事務所も多くあります。
家族の扶養内で働きたい人は特に問題ありませんが、社会保険に加入してしっかりフルタイムで働きたい人は小規模すぎるところは避けた方が良いですね。
また資格取得したときの祝い金や資格手当等も整備されていない可能性が高いですが、逆に言えば前例がないぶん交渉次第で出してもらえる可能性もあります。
人数だけで判断するのは危険!
ここまでは人数ベースで税理士事務所の大小を分けてきましたが、単に人数だけで規模の大小を判断するのは危険です。
人数以外の要素が理由で、小規模事務所だけど大きな事務所の特徴を持ち合わせているケースも、もちろんその逆のケースもあります。
ここからは、人数以外に何を確認すると良いかをご紹介します。
地場の事務所なのか、全国展開の支店なのかを確かめる
もともと税理士業界に興味のあった人でない限り、税理士法人名を見てもそれが大手事務所なのか個人事務所なのかわからないと思います。
ですので、応募前にそこが全国展開かそうでないかは確かめておくことをおすすめします。
同じ20人規模の税理士事務所でも、片方は地場の税理士が開業した事務所、もう片方は全国展開の税理士法人の地方支店だった場合、圧倒的に全国展開の地方支店のほうが大規模事務所の要素を多く持っています。
人数だけで判断すると見落としてしまいがちな要素ですので、事前チェック必須です。
成長途中なのか、現状維持なのか、縮小段階なのか
税理士事務所が成長途中なのか、現状維持したいのか、縮小段階なのかがわかれば、事務所の働きやすさを想像する材料になります。
どの段階にあるかで、小規模事務所の特徴と大規模事務所の特徴がどのように入り混じっているかを予想できるためです。
同じ人数で3つの事務所があったとして、それぞれ以下のような特徴があると予想できます。
- 今後仕事も従業員も増やしていきたい → だんだん大規模事務所に近づいていく
- 大規模事務所の要素を持つまでの環境整備渦中に在籍することになる
成長途中の事務所は、今まさに大きくなろうとしているので小規模事務所の特徴が大規模事務所の特徴へ切り替わっていく渦中にあります。
しかしノウハウがあるわけではないので、研修を取り入れようとして失敗したり、評価制度を組んでみてうまくいかなかったり……といったことが起こると考えられるでしょう。
- 今いる人を定着させ、仕事も安定させたい → あまり環境を変えたくない
- やりにくいところだけ見直していく程度
現状維持の事務所は、今の状況が安定していて極力このままありたいと思っています。
現状をより良く……とはあまり考えないので、現状がどんな状況なのか見極める必要があります。
- 所長の引退を見据えてお客さんを減らしていく
- 人数が多かった頃の慣習だけが残っている可能性がある
一度はある程度の規模まで大きくなったものの、所長の高齢化などで引退を見据えて縮小している途中の事務所もあります。
そういった事務所は人数が多かった頃の慣習が残っていて、小規模でも人に教える体制や評価基準が仕上がっていることがあります。
もちろん「今となっては謎なルールだけ残っている」という可能性も否定できませんが……
その事務所の背景がわかれば、今後どんな事務所になっていくかを予想しやすくなって、職場選びの参考になりますね。
まとめ:どちらが自分にとって働きやすいか考えよう
税理士事務所の大きさによる特徴の違いはご理解いただけたでしょうか。
「大きな事務所は働きやすい」「小さな事務所は働きにくい」と一辺倒ではなく、それぞれの特徴が自分にとって働きやすいかどうかを考えるのが大切です。
今回の記事の内容が頭に入っていれば、求人を見る目も少し変わるのではないでしょうか?
税理士事務所に転職したいあなたにとって働きやすい、良い事務所が見つかることを祈っています。
- 税理士事務所は5人以下の事務所が最も多く、20人を超えるとそれなりの規模
- 自分が働きやすいと思う要素がどちらに多くあるかを整理するのがおすすめ
- 大規模・小規模どちらの要素も入り混じっている事務所もあるので、人数だけで判断しないこと!
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